日産の減額強要 下請けいじめの悪質さ 2024年3月5日
下請け業者への納入代金を一方的に減額したのは下請法違反に当たるとして、公正取引委員会(公取委)が近く日産自動車に再発防止を求める勧告を行う。日産には30社以上に減額を要求した疑いがあり、減額分は計約30億円と同法施行以来最高額に上る見通しだ。 立場の弱い取引先に納入代金の減額を強要したとしたら、日産の経営姿勢は悪質だ。公取委は過去にさかのぼって関係する取引を徹底的に再調査し、法に基づく厳正な処分を行うべきである。 日産は公取委から指摘を受けた事実を認め、「減額分を業者に返した」と説明しているが、返金しただけでは問題を根本的に解決したことにはならない。 日産は、取引停止を恐れる下請け業者は理不尽な要求でも応じることを見越して減額強要を繰り返し、経費削減を図っていた可能性が高い。自動車産業の代表的なメーカーによる法令軽視には、あきれるほかない。 不当な減額要求が数十年に及ぶ疑いも浮上している。下請けいじめが長期間発覚せず、続けられていたとしたら極めて深刻だ。 公取委は近年、大企業が価格転嫁に応じているか、価格交渉の監視を強めているが、念のため自動車業界だけでなく全製造業種を対象に、日産と同様の例がないか調査すべきではないか。 今春闘では、大企業の賃上げを取引先である中小に波及させることが大きな課題となっている。中小の賃上げ実現にはコスト上昇に見合う適正な価格転嫁が必要だ。日産の減額強要は中小の賃上げという社会的要請にも水を差す行為であり、到底許されない。 日産は公取委の調査とは別に、有識者で構成する第三者機関を立ち上げ、全容解明を図ることで社会的責任を果たすべきだ。 国内の製造業は大企業と下請け企業との緊密な協力関係で成り立つ。下請けによる支えがあってこその製造業だ。 |